これはわたしが生まれるずっとずっと前、歴史の教科書に書いてあったこと。
 天気を操り、永遠の太陽光発電を実現しようとした科学者がいたそうです。
 その科学者が撒いた、雲を蹴散らす薬剤によって、
 この地球は、真っ黒な雲と、
 人すら枯らす高酸度の雨と、
 何も生み出さない土に覆われました。
「ヘンリー。どこにいるの?」
 お母さんの声が聞こえますが、ヘンリーは無視しました。
 いまは人生の一大決心を実現するための、下準備の真っ最中なのです。
 青い空を見てみたい。
 それは、インターネットで見た、大昔の画家による水彩画によって生まれた夢でした。
 そんな夢は、大統領だって実現しようがありません。
 なにせ、あの黒い雲は飛行機はもちろん宇宙ロケットだって貫けないほど厚いのです。
 そこでヘンリーは考えました。
 宇宙船の頭から、あの雲を分解する薬品を散布させればいい。
 ヘンリーは大まじめですが、お父さんとお母さんは笑っていました。
「そんな宇宙船をどうやって作って飛ばすんだい?」
 ヘンリーは考えました。食事中も、お風呂に入るときも、布団に入ってからも夢の中でも考えました。その結果、計算上は、ヘンリーが作ったこの機体で、あの雲を撃ち抜けるという結論に至りました。
 あとは、どうやってこの家から出るかです。
 黒い雨がやまないとわかったとき、人類は外に出ることをやめました。
 ですから、この家にはドアがありません。
 ヘンリーが生まれる前から、この家には外につながるドアがないのです。
 そこで、ヘンリーは、自分の部屋にある排気口に目を付けました。
 あの排気口のエアフィルターを外せば、外に機体を飛ばすくらいのことはできるはずです。
 頑丈だったフィルターの螺子は、もうすぐ……
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物書き会in山口企画・闇鍋まつり

六瓢歩穂 -online-

published by六瓢 歩穂
闇鍋で引いた具材「不毛」にてssを書いてみる企画
執筆開始 : 2019年12月15日 15:48
最終更新 : 2019年12月15日 16:07

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